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【自分に合った方法を選ぼう】美術館の楽しみ方3パターンとその具体的な方法

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アートに興味があり、美術館に行きたい・あるいはよく行くものの、いまいち鑑賞方法が分からない…。そう考えている方も多いのではないでしょうか?

私自身は大学で現代美術を中心に学んだ経験があり、自分でも作品を作っていたので、美術館巡りが大好きです。

それでも「解釈が難しい!」「分からなかった…」と感じる作品や展覧会もあり、普段アートに触れる機会の少ない方が鑑賞方法に迷うのも無理ないよな…と思います。

しかし、美術館愛好家の一人として、もっと多くの方が楽しめるように魅力を伝えたい!ということで脳内を整理してみたところ、いくつか方法があるなということに気付いたのでまとめてみました。

どうやって作品を観たらいい?美術館の楽しみ方

私なりの結論は、「自分の感性に従って観て楽しむのがベスト」です。

それが分からないから困っているんだ!という声が聞こえてきそうなので、具体的に美術館で作品を楽しむ方法を以下の3パターンに分けてご紹介していきます。

  1. 感性で観る(上級者向け)
  2. 情報として観る(中級者向け)
  3. 体験を楽しむ(初級者向け)

上級者向け→中級者向け→初級者向けの順でご紹介していきますが、これは上級者向けの「感性で観る」方法が一番深く楽しめると方法だと考えているからです。少し長くなりますが、参考にしていただけたらうれしいです。

パターン1.感性で観る<上級者向け>

まずは上級者向けの「感性で観る」という方法について詳しく解説していきます。これは、デパートやネットショップで欲しい服を探す感覚に近いのかな?と思います。

もともとアートやデザインにすごく興味があったり、カメラマンや美容師さんなど、どちらかといえば感性を使った仕事をしている方あるいはそれを目指している方に向いている方法です。具体的にお伝えしていきますね。

一人で観ることがおすすめ

この方法で鑑賞する場合、一人でまわることをおすすめします。友人や恋人と行くことはもちろんOKなのですが、会場では別行動にすることがベストです。

というのも、どうしても誰かが隣にいると気を遣ってしまい、感性のセンサーを最大限に働かせることが難しいからです。複数人で行く場合は、会場の外で待ち合わせてカフェなどで意見交換をするとより楽しめると思います。

あえて順番通りには観ない

先ほども少し触れたのですが、この方法では感性のセンサーを働かせることが最も重要です。あえて順番通りに観ることはせず、会場をさらっと見渡して複数の作品の中からピンときたものをじっくりと鑑賞してみると良いです。

人間のセンサーはとても優秀です。例えば、気になっている新作のスニーカーがある時って、大勢の人が歩く街中でもそのスニーカーを履いている人に気付いたりしませんか?

それと同じで、気になった作品は意識的にせよ無意識にせよきっと理由があります。その時すぐに理由が分からなくても、後から色々とリンクすることもあります。それは、お仕事上の悩みだったり、人生経験だったりするかも知れません。

すべての作品をじっくり観るのをやめる

私は大学生の時に初めてルーブル美術館を訪れたのですが、展示されている作品の多さにかなり驚きました。

日本の美術館ではある程度余白があり、基本は壁に一列作品が並んでいることがほとんどですよね。しかしヨーロッパの多くの美術館では、壁一面に、天井の上の方までびっしりと、しかも歴史に残る有名作品がゴロゴロ展示されているという…。

しかもルーブル美術館など有名どころの美術館は、1日ですべてまわるのは難しいほどの広さです。とてもすべてきちんと観てはいられないということで、センサー全開にしてがんばった思い出があります。

人間が一度に許容できる情報量には、やはり限界があります。せっかくお金を払って観に来たのだから!と、すべての作品に同じだけ時間をかけてじっくり観ていると、結局疲れてしまって何が印象に残ったのか分からなくなってしまった…。なんてこともあるのです。

そのため、なるべく自分にとって何か訴えかけてくる作品にはしっかりと容量を使い、特に引っ掛からなかった作品に関してはさらりと流す、くらいのつもりで鑑賞することをおすすめします。

センサーをフル活用。自分の感じたことを大切に

作品と対峙したら、色づかい、形やリズム、筆づかい、全体感など言語化できない感覚や感情をじっくりと味わってみてください。

キャプションや年表を読むのはその後でも良いと思います。情報を知ると、作者の考えや作品に対して気付くことがあると思います。

時間があれば、1週目はそのように飛ばし飛ばしで観てまわり、2週目は順番通りにさらっと見ていっても良いです。順を追って見ることで、展示の意図や作風の遍歴を知り、新たな発見があるかも知れません。

コンセプトありきの作品もあるので注意

この方法の唯一の落とし穴というと、コンセプトありきの作品を見落としてしまうかもしれないということ。アートのジャンルとして、展示物自体は特に造形的に見応えがなくても、コンセプトを知ることで成立するというものもあります。いわゆる「コンセプチュアルアート」と呼ばれるジャンルです。

このような作品の場合、近くの壁に説明文があったり、手渡しで配られる場合もあるので情報とセットで鑑賞するようにしましょう。

パターン2.情報として観る<中級者向け>

次は中級者向けの方法です。美術に興味があり、何度も美術館に足を運んではいるが、いまいち鑑賞できているか謎。普段からわりと論理的に考える傾向にあり、「何となく好きかも」や「何となくきれい」といった感情がよく分からないという方におすすめの方法です。

一人で観ることがおすすめ

この方法のポイントは、一旦はアートを「情報」として観ることに集中すること。博物館でものを観る感覚に近いです。

普段から論理的に物事を考えられる方は、中途半端に「これは何を伝えたいんだろう?」「この作品の感動ポイントはどこなんだろう?」などと考えると、結果的に何を観てきたのか分からなかった…。という状態になることもあるため、それならばいっそ振り切ってしまおうというわけです。

この方法で鑑賞する場合も、脳内会議が活発に行われるため会場内では一人で行動することをおすすめします。あるいは、体験型や気軽におしゃべりできるような展示の場合、詳しい人に解説をお願いするとより楽しめると思います。または、音声ガイダンスや学芸員によるガイドツアーなどを活用するのもおすすめです。

できれば予習を万全に

少々手間ですが、事前に作者のことや時代背景、展覧会のコンセプトについてしっかり調べておくとベストです。

大きな展覧会は同時期にTVの特番などが組まれている場合もあり、先にそういったものを見て知識を蓄えておくのも良いですね。

徹底的に情報を観る

会場内では順番通りに、全ての作品に目を通すようにしてみてください。ただし、すべてじっくりと見ていくと前述のように容量オーバーになってしまう恐れがあるため、音声ガイダンスがある作品には時間をかけるなど優劣を付けても良いと思います。途中、年表や説明文などがあればそれにも目を通してみましょう。

事前に予習してきたことを思い出しつつ、素材の扱い方や技法、展示の方法などもふまえて「観察」してみます。例えば、テンペラ画を観るなら、卵を使っているんだな、木の板に描かれているんだな、テーマは聖書のこの部分だな、など。許可がある場所ならメモを取っても良いです。

徐々に感性センサーを働かせることに挑戦

時間が許せば、1週目はそのように情報を観ることに集中し、2週目でパターン1でご紹介した感性センサーを働かせることに挑戦してみてください。ここでは情報を一切省き、理屈抜きに目に留まったものをもう一度じっくり観てみます。

理由は分からなくても全く問題なく、気になるかも?という程度でOKです。それもメモしておいて、次回展示に行く際はその作家と同じ時代やジャンルを見てみると、自分の「何となく好きかも」「何となくきれい」といった感覚に素直に向き合うことができると思います。アートだからと身構えず、風景とかタレントさんとか、もっとライトにとらえて良いと思います。

実はアートを単に情報としてとらえるだけでも、面白みはたくさんあります。コンセプチュアルな作品であれば、特に感性を働かせることなく理屈で理解し、感動することもあるでしょう。言うなれば読書をして、新しい考えを知った時と近しい感覚です。

できれば理想は理屈抜きで作品を楽しめるようになることだと私は考えますが、もともとその分野を鍛えていない状態でいきなりできるようになる!なんてことはまずないですよね。

目的を整理して鑑賞を続けることで、ある日突然『奇跡の人』さながらに「ウォーター!」とあらゆる情報が繋がり、予備知識なしで楽しめる瞬間が来ると思います。

パターン3. 体験を楽しむ<初級者向け>

最後は初級者向けの方法をご紹介します。これはあまり美術に興味のない方におすすめなのですが、とにかく旅行のように美術館へ行くという体験を楽しむ方法です。

複数人で見て回ってもOK

この方法ではとにかくアートを見に行くという非日常を楽しむことが重要です。動物園や遊園地に行く感覚で、友達や恋人を誘って一緒にまわってもOKです。美術館は建物自体も美しく設計されている場合が多く、歩いているだけでも発見があります。

ただし、どんな展覧会を見に行くかのチェックは入念にすることをおすすめします。というのも、いくつか種類があるのですが、古典的な絵画を展示しているような展覧会だと、基本的には展示室内で大きな声でおしゃべりをしたり、写真を撮ることが禁止されている場合が多いからです。せっかく体験を楽しむならば、その場で意見交換をしたり、思い出を残したいですよね。

おすすめは、現代アートの展覧会やトリエンナーレなどの芸術祭、野外アートなどの展示を選ぶこと。見た目が華やかなものが多く、最近では写真を撮ってSNSにシェアするのもOKという企画も増えています。実際に作品入ったり、寝転びながら映像を観たり、風景と一体化しているものなど、特に事前情報や特別な感性が無くても楽しめます。

ファッションにもこだわってみる

せっかくなら、ぜひファッションも含めて楽しんでみましょう。例えばモノトーンの作品に合わせてオールブラックのコーディネートにしてみたり、映えるカラーを選んでみたり。少しラグジュアリーな展覧会なら、普段なかなか着れないよそ行きのワンピースを選ぶのも良いですね。

ただし、慣れない靴を選ぶと足が疲れてしまい、存分にまわれない可能性があるので注意が必要です。

併設のカフェやミュージアムショップにも行ってみよう

美術館には併設のレストランやカフェがあることも多く、併せて楽しむのもおすすめです。美しい景色が望めたり、野外彫刻を眺めながらお食事ができるところもあります。中には、インテリアが有名なデザイナーが手がけた作品だったりすることも。

ミュージアムショップにもぜひ訪れてみましょう。展覧会オリジナルのグッズや、デザイン性の高いアクセサリーやバッグなどが販売されていたりもしますよ。

周りの鑑賞者や作者には最大限の敬意を

美術館は基本的にはとても静かに過ごす場所です(脳内会議をしている方も多いです)。友人や恋人と意見交換をするといっても、他の鑑賞者の妨げにならないように配慮しましよう。

写真撮影OKの作品であっても、作品を「背景」として、自分が主役になる撮影の仕方は個人的には賛成しかねます。また、許可があるもの以外は作品に触れることはNGです。楽しみ方は自由ですが、アーティストに最大限の敬意をはらうことを忘れないようにしたいですね。

まとめ

今回は、私なりに考えた美術館の楽しみ方について3つの方法をご紹介しました。特にこれが正しい!というわけではありませんし、ミックスして楽しむのもありだと思います。

この記事を書くにあたり、高校生のころ美術予備校で(超ストイックな)先生に言われた言葉を思い出しました。

それは
「これから絵描きになろうとする人間が、全部順番通りに観てたらだめだよ」
「ざっと見渡しただけでどれを見るべきか分かるでしょ?」
というものです。笑

お金のない高校生にとって、全ての作品をじっくり観ずにピンポイントだけで鑑賞するというのはとんでもなく勇気のいることだったのですよね…。

それから数年たち、前述したカオスなルーブル美術館を訪れた際、ざーっと見まわしただけでダ・ヴィンチやマティスの小さな絵にも反応できるようになりました。というか、あの量のなかでもオーラを放つ巨匠の作品は本当にすごいなと思います。

参考になればうれしいです!

 

ABOUT ME
yamada
フリーランスのデザイナー・ライター・カメラマン。元美術の先生。アートやデザインに関する情報をわかりやすくお伝えします!